銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 やっとの事で広い空間に出て、あたしは床にヘタリ込む。

 つ、ついた! やっとついた! も―ダメ限界! ゼエゼエ……!

「……う!?」

 思い切り吸い込んだ空気が胸を汚染して、あたしは思わず両手で口と鼻を覆った。

 ひどい悪臭!

 吐き気を催す、まるでゴミ溜めのような汚臭が室内に充満している。

 澱んだ重さ、鼻を突く鋭さ、濁った不快さ。

 水質汚染の極まったドブ川みたいな臭い! うわ! たまらない! なんでこんな臭いが!?

 顔を上げて室内を見回すあたしの視界に、何かが見えた。

 ……なに? なんだろうあれ?

 見慣れなくて、不可解で、すぐには認識できない光景が、ある。

 あたしは悪臭に耐えて浅い呼吸を繰り返しながら、その光景を見つめた。

 薄暗い室内で、少しずつハッキリしてきたそれは、白い繭だった。

 大きな大きな、人間の大きさ程の白い繭。

 透ける様に真っ白な繭の、その中には……。

 巨大な幼虫?

 うわ、人間並みの巨大幼虫が、中でビクビクと蠢いて……

 蠢い……て……

 ……。

 あれ、は……。

「……精、霊?」
< 415 / 618 >

この作品をシェア

pagetop