銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
―― ギャアァァ――!!

 まるで重複する機械音のような悲鳴が、全ての精霊達の口から飛び出した。

 そのあまりの凄まじさに、あたしは両耳を押さえる。

 地面に打ち上げられた魚のように、精霊達が繭の中で暴れた。

 繭が……

 繭が締め上げているんだわ! 精霊達を!

 万力に挟まれるように締め付けられて、恐ろしい力で絞り上げられている!?

 極限の苦痛にさらされる精霊達が、嘔吐した。

 そして両目からは滝のように涙が溢れ零れ落ちる。

 たくさんの涙が零れて……

 ……違う!

 涙でも嘔吐物でもない! あれは……

「宝石!?」

 黄色い髪と瞳の精霊からは、大小様々な黄色の宝石が。

 青い髪と瞳の精霊からは、青色の様々な宝石が。

 緑からは緑。白からは白。そして金色の髪と瞳の精霊からは、黄金が溢れ落ちている。

 なんて……なんて事!?
 なんでこんな事が!? どうして!?

 反響する精霊達の絶叫の中に混じって、何かが聞こえた気がした。

―― うふ……。

 それを聞いた途端、背中に寒気が走って、嫌な予感がした。

 この声。これって聞き覚えがある。

―― うふふ……。

 ギクシャクと首を回して、声のする方向を見たあたしの目が、捉えた。

 白い繭達に埋もれるように、うずくまる姿を。

 精霊達の吐き出す宝石を両手に掬い、嬉しそうに笑っている、彼女の姿を。

「マティルダちゃん!?」

 あたしは、精霊達に負けないほどの悲鳴を上げた。
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