銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 良い両親。
 でも両親は、傷付いたあたしの気持ちより、自分達の憤りや世間体の悪さばかりを気にしていた。

 親のくせに、何も理解してくれていなかった。

 理解、か……。
 たとえ同じ種族同士でも、理解し合うのは難しい……?

「さあ、行くぞ。神殿へ」

 暗く巡るあたしの思考を、風の精霊の声が遮った。

「急ぐぞ。早く砂漠の神に会わなければ」

 あぁ、そうね。そうだわ。とにかく今はそれが最優先。

 コイツもそんな性悪でもなさそうだし、あれこれ悪いことを考えるよりも、希望を持って前に進むのが肝心……

「ほら急げ。半人間」
「……」
「あぁ違った。えぇと、一滴?」
「……」
「違ったか? なんだったか?」

 こいつ……。
 もしかしてペキニーズ以下か!?
 やっぱり思いっきり無礼千万じゃないの!

「雫よ! しずく!!」
「そうだった。行くぞ雫。虹に乗れ」
「に……! じに、乗れぇ?」

 どうやって乗るの? 虹なんかに。

 そんなメルヘンな事を、ごく当たり前に言わないでよ。

 一般常識に凝り固まった大人の頭じゃ、ついていくのがやっとなんだから。

「深く考えるなよ。ただ乗ればいいんだ」

 風の精霊はじれったそうに、あたしの腕を掴んで前に進んだ。

 うわ、うわ、精霊に腕を掴まれた。しかもこんな至近距離で虹を見るなんて初めてだわ。
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