銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 …………!?

 いま……いま、何て言った!?

 この塊りを、何て呼んだ!?

「アグアよ、これが異世界の人間、雫だ」

 あたしの心の中の問いに答えるように、番人は再びその名を口にした。

 はっきりと言った。

 あたしは聞いた。

 ……アグア。

 あたしの目は、汚れきったヘドロに覆われた物体を凝視する。

 どう見ても、ただの汚い塊りにしか見えない。

 なんとなく、縦長の形が人体っぽい形を成しているように感じるけど、とてもじゃないけど、これがまともな生き物とは思えない。

 とてもじゃないけど、まさかこれが。
 これが。

「これが……アグアさん、なの?」

「いかにも。これぞまさしく砂漠の神に愛された水の精霊、アグアである」

「……」

 なにをどう言えばいいのか、分からない。

 どういう風に認識すればいいのか、む分からない。

 水の精霊、アグア。これが?

『これ』が?

「うそです!」

 ノームが必死の形相で番人に向かって反論する。

「これはアグアじゃありません! アグアの気配が、あの気高く澄み切った清涼な気配が、まるで無い! アグアじゃありません! アグアじゃない!」

 ノームが、ブンブン首を振りながら何度もそう叫んだ。

「土の精霊がどう思おうが、事実は変わらぬ。これは水の精霊アグアである」
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