銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしが原因って何それ!?

 い、言いがかりよ! あたしは何もしてないわ!

 誤解よ! なんだか全然分からないけど、とにかく無実よ!

「あんた! アグアさんに何かしたんでしょ!?」

 そうに違いない! 幽閉している間に何か、とてつもなく残忍な事をしたんだわ!

 でなければ、彼女がこんな悲惨な姿になるはずがない!

 話を聞くたびに思ってた。想像してた。

 モネグロスにあれほどまでに愛され、皆に絶賛される、素晴らしい精霊。

 過酷な試練にも負けない気高さ。愛を貫き通そうとする純潔さ。

 密かに憧れていた。ひと目会うのを待ち望んでいた。

 それが、それがこんな!

「わたしは何もしてはおらぬ」

「嘘よ!」

「嘘ではない。それどころかアグアの望みを叶えてやったのだ」

「望み?」

 番人の指が、空中に向かって大きな円を描く。

 その部分の空間が、まるで水面が揺らめくように波立った。

 歪んだ空間に様々な色彩が、万華鏡のように複雑に組み立てられていって、やがてボンヤリと、何かの形になった。

 あれは……。

「あたし!? あたしの姿が映ってる!?」

 少し霞んだ空間に浮かんでいる姿は、紛れも無くあたしの姿だ。

 写真? じゃないわ。動いてる。

 あたしと、ジンと、それにモネグロスの姿。

 背景は砂漠で……これは神の船?

 これって、神の船で砂漠の海を移動していた時だわ!

 その時の映像が、まるで録画再生みたいに映ってる!

 どうなってるの!? この空間!?
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