銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 映像の中で、モネグロスがあたしに微笑んでいる。

 あたしは涙ぐみながら、モネグロスをじっと見つめていた。

 ……覚えてる。神の船の上での光景だわ。

 不意に映像が変わって、大破した神の船の姿が映った。

 手を取り合って、何事かを真剣に語り合うモネグロスとあたし。

 それから、あたしを力一杯抱きしめて、イフリートに向かって叫んでいるモネグロス。

 あたしを抱きかかえ、炎から守っているモネグロス。

 森の中ですすり泣きながら、あたしの肩にもたれるモネグロス。

 城に侵入する際、涙ぐんであたしの手を握り締めるモネグロス。

「グ……グゥゥ……」

 映像を見つめているアグアさんから、不明瞭な唸り声が聞こえてくる。

 ヘドロにまみれた全身がワナワナと震えだし、唸り声がどんどん大きくなった。

「グアアァァ――!!」

 ついにアグアさんが映像に襲い掛かった。

「グアァ! ガアァァ――!!」

 ヘドロをビシャビシャと撒き散らしながら映像を殴り続けるも、汚れた腕はそれを突きぬけ、虚しく宙を舞う。

 それでも彼女は獣のような声を上げ、あたしとモネグロスの姿に向かって、いつまでも殴り続けた。

 いや……違う。

 あたしの姿だけを、狙い定めて殴りつけている?

 まるでカタキを付け狙うように、憎しみを込めてあたしを殴っているんだわ!

 濁った彼女の水色の目に、はっきり浮かぶもの。

 それは、その目には身に覚えがある。かつてあたしの目も、それに憑りつかれていた。

『嫉妬と憎悪』

 心から愛する者を横から奪い去られた絶望の色。

 アグアさんは、あたしとモネグロスの関係を、よこしまなものだと誤解してるんだ!
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