銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「アグアさん! こんな奴の思い通りになっちゃダメよ!」

 アグアさんは床に崩れ落ち、ゼエゼエと苦しげな息を吐いている。

 恐ろしい病原菌が全身に巣食っているようなものだもの。きっとこのままじゃ彼女の命も長くない。

 でも負けないでアグアさん! 負けちゃだめよ!

「モネグロスを、彼の愛を信じてあげて!」

 途端に、彼女の恐ろしい視線があたしを貫いた。

 怨念のこめられた目が、あたしを射殺さんばかりに睨みつけている。

 その恐ろしさたるや、まるで鬼か悪魔だ。あまりの恐怖に、あたしは悲鳴をあげてしまった。

「無駄だ。お前が何を言おうと。いや、お前の存在そのものが、アグアの穢れを増幅させる」

「そんな……」

「それがお前の役割。この世界に呼ばれた真の理由だ」

「なんですって!?」

「まさか自分が、偶然この世界に来たなどと思ってはおるまいな?」

 精霊と人間の間に立ち、ふたつの関係を決別させる

 アグアの穢れを増幅させて世界中に撒き散らし、この世の全てを汚染する。

「我が主、始祖の神に導かれたのだ。お前は」

 番人の言葉を聞きながら、あたしの全身から、みるみる力が抜けていく。

 確かに……あたしのせいでジン達は、人間に攻撃を仕掛けた。

 あたしの行動が結果的に、ジン達やヴァニス達の関係を断ち切ってしまった。

 あたしの存在が、アグアさんを穢してしまった。

 あたしが、これらの全ての現象の引き金を引いてしまった?
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