銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 でも、アグアさんに再び会える事を願い続けたモネグロスが、このことを知ったら……。

 彼が、このアグアさんの姿を見たら……。

「グウゥ! ウゥ!!」

 アグアさんの唸り声がますます大きくなって、あたしは掻き毟られるように痛む胸を手で押さえた。

 苦しむアグアさんを、とても見ていられない。

 断末魔の悲鳴を、とても聞いては……

「グゥ……アァ……アアア――ッ!!」

 空気に轟く絶叫に、思わず両手で耳を押さえて身を縮込ませた。

 ごめんなさい、アグアさん!

「……ああぁ!?」

 急にノームが、苦しげな悲鳴を上げる。
 すると、これまで一方的に収縮していた蔓が、急に膨張し始めた。

「ノーム、どうしたの!?」

「ああ! うああぁぁ!!」

 身を反らせて悲鳴を上げ続けるノーム。

 ブツッ、ブツンと鈍い音が聞こえて、膨らんだ蔓の表面が、千切れるようにどんどん裂けていく。

 ああ! 中から、何かが……

―― ドオオ――――ッ!! ――

 空気を切り裂くような絶叫と衝撃が、蔓から爆発して飛び出した。

 その衝撃波によって、繭、精霊、侍女達が横っ飛びに吹っ飛ばされる。

 無数の宝石が、降る様に空中に舞い散った。

 その様子を横目で見ながら、あたしの体も勢い良く吹っ飛ばされる。

 したたかに壁に背中を打ちつけ、息が詰まった。

 呼吸もできないほどの背中の痛みに激しく咳き込み、酸欠状態になる。

 喉に手を当て苦しむあたしの目に、空の色と、外の景色が映った。
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