銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 外? なぜ外の景色が見えるの?
 この室内に窓は無かったはず。

「……!?」

 あたしは、信じられない思いで目の前の光景を見つめた。

 周りを覆っていた壁も、天井も、影も形も無くなって、崩れてボロボロに砕けた残骸が足元に散乱していた。

 さっきの衝撃で、この室内のほとんどが吹き飛ばされたんだ!

 いまあたしがいる場所は、外界と遮られるものが何も無い、高い高い塔のてっぺん。

 ゾッとしながら自分の背中の方を窺えば、僅かばかりの面積の壁が、ひび割れてポツンと残っている。

 偶然、この壁に叩き付けられて助かったんだ。

 もし壁の無い場所に飛ばされていたら、命はなかった。

「ノーム! 無事!?」

 慌てて胸元を覗き込むと、ノームは意識を失ったのか、ぐったりとして目を閉じている。

 でも生きてる。あぁ、良かった!

 ……あ! そういえばみんなは!?
 みんな、どこ!?

 慌ててみんなを探すあたしの目に映るのは、室内の中心に立ち尽くすアグアさんの姿だけ。

 番人の姿も見えないし、精霊も侍女たちも、誰一人として見つからなかった。

「誰かいない!? いたら返事して!」

 フラつきながら立ち上がり、近くのガレキの下を懸命に探していると、どこからか小さな声が聞こえてくる。

「たす、けて……」

 この声は!

「マティルダちゃん!? どこなの!?」
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