銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 真実も、正義も、罪悪も簡単には断じれない。

 だから世界には、現実に『しかたない事』や『無理もない事』がたくさんある。

 苦悩しながら、それを飲まねばならない時がある。それをあたしはこの旅で知った。

 でも同時に、『しかたない』が、言い訳にならない場合がある事も知った。

 あたしには、マティルダちゃんの命を、『しかたない』のひと言で片付けられない。

 こんな事態はあってはならない事なんだ。

 だから、アグアさんをとめる。

 たとえそれが不可能であったとしても、それでもあたしは、こんな事態は絶対に受け入れない。

 足掻いてやる。足掻いて、足掻いて、無駄な足掻きをしまくってやる。

 可能も不可能も関係ない。それこそがあたしの拒絶の証明。

『こんな事、どんな理由があろうと絶対に認めない』

 これがあたしの選んだ意思だ!

「アグアさん」

 自分の両膝をがっしり掴んで、ゆっくり立ち上がったあたしの姿を見て、アグアさんの笑い声がピタリとやんだ。

 ……ねぇアグアさん。あたし達はよく似ている。

 傷付いて、苦しんで、恨んで恨んで、道を踏み外した。

 分かるわ。すごく分かる。

 だから……

「いっちょ腹ぁ割って、女同士とことん話し合いましょうか!」

 あたしは威勢良く怒鳴り声をあげた。
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