銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
―― ギャアオォォ―――ッ!!

 悪魔のような雄叫びが響いて、またも凄まじい衝撃波が襲ってきた。

 床全体が粉砕されて吹っ飛び、あたしの体もガレキに混じって木の葉のように宙を飛ぶ。

 内臓に感じる奇妙な浮遊感。

 大の字になって、虚しく落下していく体。

 しがみ付く物も何も無い空中で、目に映るのは黒い雨と、崩壊した塔と、あれよという間に遠ざかる灰色の空。

 落ち……落ちてる!

 落ち、る―――!!

 すかさずビュルルッ!と音がして、数本の蔓が宙を舞った。

 一本の蔓があたしの体をグルグル巻きにして、壊れた塔の残骸になんとか巻き付く。

 あたしの体は、まるで蓑虫のようにブラーンブラーンと左右に揺れた。

「ノーム! 意識が戻ったのね!?」

「うう、う……」

 ノームが歯を食いしばって、あたしを支えていた。

 遥か下方に地面が見える。ここから落ちたら間違いなく、死ぬ。

「くうぅぅ……!」

 さっき、アグアさんに蔓を引き裂かれたばかりだ。傷はまったく癒えていないはず。

 それでもノームは、あたしの体重を支えようと頑張ってくれている。

「ノ、ノーム!」

「ぐううぅぅ……!!」

 ノームは両目をギュッと瞑り、今にも泣きそうに顔を歪めて耐えている。

 でも、ガレキに巻き付く蔓がピリピリと裂け始めた。

「ぐああぁ!」

 耐えるノームの目から涙が溢れて流れた。頭を激しく左右に振って悲鳴を上げる。

 ついに限界がきて、あたしの目の前で蔓が真っぷたつに千切れてしまった。
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