銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ジン。間違いなくジンだわ。

 ジンが空中であたしを受け止めてくれている。

 それは間違いのない現実なのに、あたしにはどうしても信じられない。

 だって、どうして? なぜ? なんであなたがここにいるのよ?


 疑問は湧くのに、答えを聞くのが怖くて声が出せない。

 でもその反面、ジンの声が聞きたくてしかたかった。

 銀の瞳が、そんなあたしをじっと見つめている。

 その沈黙がまた、あたしを不安にさせた。

 ジン、お願い。黙ってないで何か言って。話して。

 そして……そしてどうか、これが夢ではないと自覚させて。

「お……」

 ジンの唇が動き始めて、あたしの胸は激しく鳴った。

 夢を見ているような思いで、彼の唇を眺める。

 ジン、言葉を、あたしに言葉をちょうだい……。

「重いんだよ! お前は!」

 ……ガ―――ンッ!!

 頭をハンマーでぶん殴られたような激しいショックが襲った。

 お、重い? おも、重いって……。

『重い』の単語が頭の中でぐわんぐわんとエコーして、しばらく唖然としてしまった。

 そして衝撃が治まるや否や、ガァッ!っと急速に頭に血がのぼる。

 再会の第一声が、よりによってそれか!?

 あんたって男はあぁぁ!!

「悪かったわね! デブで!」

「デブって何だよ!? オレは『重い』と言っただけだ!」

「同じことじゃないの!」

「全然違う! それより、飛べもしないクセして飛び降りるなよ! ビックリしただろ!」

「飛び降りたんじゃないわよ! 落ちたのよ!」

「同じことだろ!」

「全っ然違う!」
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