銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 空中に浮きつつ、お互いツバを飛ばして怒鳴りあっていたら、か細い声が聞こえる。

「あ、のぉ……できればケンカは後にして、治癒してくれたらすごくうれしいです……」

「ノーム!? しっかりしろ!」

「大丈夫!? ノーム!」

 ジンが慌てて宙を移動して、その時初めて城の状態が目に入った。

 ……半壊状態。堅牢な城が、見事に破壊されている。

 アグアさんが放った衝撃波は、塔ばかりでなく城本体まで破壊したんだわ。

 ポカリと大穴が開いた箇所から城内に入り込み、その場でジンが早速ノームの治療を始める。

 治癒の効果は、本来なら水の力の方が高いらしいけど、いかんせん半人間の身では力の使い方が分からない。

 もどかしい気持ちで、両手を合わせて回復をひたすら祈った。

「ノーム、どうだ? 少しは楽になったか?」

「は、い。ありがとうございます」

 ノームの荒い呼吸が落ち着いてきて、あたしはホッと安堵の息をつく。

「偉いぞノーム。よく頑張ったな」

「ノーム、助けてくれてありがとう」

「いいえ、そんな。わたしはやくそくを守りたかったんです」

「約束って?」

「しずくさんを守るって、やくそくしました。でも守れなくて、それどころか逆に救い出してもらって。だからこんどこそ、しずくさんを守りたかったんです」

「ノーム……」

「けっきょく守ったのは、わたしじゃなくてジンでしたけど」
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