銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「それをお前に伝えたかった」

「ジ……ン……」

「雫、オレはお前を愛している」

 あたしは子どものように、しゃくり上げて泣いていた。

 ジンの言葉が心に染み入って、とてもとてもとても嬉しかった。

 同時に……どうしようもないほどに切なかった。

 彼からの愛を告げる言葉が嬉しくないはずがない。

 でも、あたし達ふたりは知っている。

 おそらく、ふたりが結ばれる事は無いことを。

 ジンの立場も、あたしの立場も、世界の事情も、これで何かが変わったわけじゃない。

 なんの問題も、何ひとつ解決していない。

 このままいけば、きっとお互いまた苦しみ傷付くだろう。

 それでも、分かっていても、それでもお互い愛する気持ちをとめられない事も、あたし達は知っていた。


 どうしてもどうしてもどうしても。

 どうしても、愛してる。


 こんな想い、あたしは今まで知らなかった。

 こんな切なく苦しい、そして幸せな恋を。

 辛いけど、切ないけど、苦しいけど、悲しいけど。

 でも……

「ジン、あたしこの世界に来て良かった」

「雫……」

「あたし、あなたに会えて良かった」

「雫、愛してる」

「ジン、愛してるわ」

 涙でびしょ濡れの顔で、あたしはジン向かって微笑んだ。

 ジンも憂いを帯びた笑顔を返す。

 そして、ふたりのオデコがコツンと触れ合った。
< 461 / 618 >

この作品をシェア

pagetop