銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「うわあ!? ご、ごめんなさいヴァニス!」

「うお!? 血ぃ吐いてるぞこいつ!」

 ジンが急いで手をかざして、治療を再開する。

「しずくさんとジンって、仲が良いのか悪いのかよくわかりませんねぇ」

 まだ幼いノームにしみじみとそんなセリフを言われてしまって、思わず赤面してしまった。

 うぅ、たしかに今のはちょっと、大人げなかったかも。

 でもあたし達って、考えてみれば出会った時からずっとこんな調子だわ。

 だからかな? この空気ってすごく落ち着くの。

 ものすごい非常事態には変わり無いんだけど、ジンと再会してから、あたしの心が軽くなってる。

 ジンがいる。あたしの隣に。

 それだけで感じる、この安心感。

 何とかなるかもしれない。うん、何とかしよう!

 そんな勇気みたいなものが、ふつふつと湧いてくるのを感じる。……本当に恋の威力は絶大だわ。

 あたしは口元に笑みを浮かべて、治癒を続けるジンを見つめていた。

「よし、もうだいぶ楽になったろ?」

「うむ。一応、礼を言っておこう」

「いらねえよ。お前からの礼なんて、中身を見たら腐ってそうだからな」

 憎まれ口を叩いたジンが真面目な顔になる。

「それより教えろ。お前、精霊の長から何を聞いたんだ?」

「長? 長がどうしたのだ?」

「この混乱は、どうやら全て長の画策らしいんだ」

「なに!? それはどういう事だ!?」

「長は、始祖の神の復活を望んでいる。これはその下準備らしい」
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