銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 身を乗り出してあたし達の説明を聞いていたヴァニスの口から、唸るような声が漏れる。

「長は余に、始祖の神の復活を進言した。それが人間の為になる、と」

「この現状から察するに、明らかに嘘だな。それは」

「おのれ長め! 余を謀ったか!」

「騙される方がバカ……と言いたいが、オレ達精霊もいいように使われた」

 ジンが悔しそうに唇を噛み、ノームもガックリとうな垂れる。

 まさかあのご老体が。誰もがそう思う。

 杖をついた、ヨボヨボの総白髪のおじいちゃん。

 着ている物から頭っから、爪先に至るまで真っ白だったもの。

 まさか腹の中だけあんなに真っ黒だなんて思いもしないわよ。

 騙された。完全に。

 大罪で覆われた世界に復活する神って、どんな神?

 あまり考えたくないけど、ろくな神様じゃない事だけは確かね。

 唯一対抗できそうな世界の神々は、完全に衰弱してしまっているし。

 全部が番人の思い通りに展開しているようで腹が立つ。

「ヴァニスも番人から何も聞いていないの?」

「うむ。ただ復活には、人間と神と精霊の特別な力が必要だとしか聞いておらぬ」

 人間と神と精霊の、特別な力が必要?

 それは初耳だわ。

「それって本当の事なの?」

「長、いや番人か。あやつがそう言っていたのは確かだ」

「そう……」

「余は信じた。だからあの水の精霊や、雫を手元に置こうとしたのだ」

「アグアさんとあたし?」

「あの水の精霊は、神に愛されたこの世で唯一の精霊。雫は精霊の力を持った特別な人間だ」

 あぁ、それでヴァニスは、あたしをあの三本の石柱の場所へ連れて行ったのね?

 とにかく何か可能性がありそうな物を、片っ端から試してたわけか。
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