銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「あの時、一応は石柱が反応してたわよね?」

「うむ。確かに」

 じゃあこの件に関しては、あながち番人の大ボラとは言い切れないわけだ。

 それにしても情報が少なすぎる。

 始祖の神について、正確な情報を持っているのが番人だけって所が痛いわね。

「始祖の神は、神をうみだすだけの存在とは、ちがうのでしょうか?」

「救いの神だと思ってたが、どうやら裏がありそうだな」

「救うどころか絶対ヤバイわよ。今ですら精霊や人間はこの惨状よ?」

「人間は金品と安楽に釣られて堕落したか。……王として実に嘆かわしい」

 本当に情けなさそうに、そして悲しそうにヴァニスは嘆く。

 人間の為を思い、よかれと思って渾身の努力をしてきたのに、その気持ちを番人に、そしてある意味では国民達に裏切られたようなものだ。

「堕落させる為に……やってきた事ではないのだ」

「ヴァニス……」

「金、銀、宝石、か……」

 ポツリと呟いたヴァニスが、ハッと身を起こした。

「おい、いきなり動くなよ。完治したわけじゃないんだぞ?」

「マティルダ! マティルダはどこだ!?」

 ジンの忠告に耳も貸さずに立ち上がってうろたえるヴァニスに、あたしはギクリとする。

「雫、マティルダを知らぬか!? 探したがどこにもいないのだ!」

「あ、あの……」

「早くマティルダの所へ行かなくては! マティルダ! マティ……」

「王よ、妹姫をお探しですかな?」

 ……!!

 皆一斉に、声のした方向を向いた。

 番人が、あたし達から少し離れた場所に立ってこちらを見ている。

 とっさのことに声も出ないあたし達に向かって、番人は淡々とした態度であたし達に話しかけてきた。
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