銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 険しい表情で風の精霊が呟いた。

「眷属も残らず消滅したか」

「けんぞく?」

「神の使いだ。ここにはたくさんの眷属達が居て、賑わっていたんだ」

 神の使いが消滅してしまった?

 ろくに信仰心も無いあたしだけど、それが良い現象でない事だけは、何となく分かる。

 どうやら事態はかなり深刻らしい。
 どんな事態なのかは、相変わらず見当もつかないんだけれど。

 言いしれぬ不安を抱えながら歩くあたしの耳に、何かが聞こえた気がして、キョロキョロ左右を見回したけれど何もいない。

 空耳かしら?
 でも確かに、何か不規則な反響音が聞こえたような……。

「雫」
「え!? あ、なに!?」

 風の精霊に、いきなり名前を呼ばれてドキッとした。

 半人間って呼ばれるのは嫌だけど、下の名前を呼び捨てにされるのも、何か変な感じ。

 だからって、『相原さん』なんてコイツに呼ばれたりしたら、体中に湿疹が出そうだし。

「来るぞ」
「な……なにが?」

 あたしは、思わず風の精霊に寄り添って身を硬くした。

 やっぱり空耳じゃなかったのね!?
 何が来るっていうの!?

 やだやだ! 突然こんな廃墟の神殿に出てくる定番っていったら……。

 やっぱりモンスター!?

 嫌あ! 怖い! 化け物怖い! お願い助けて!

「ちょっと! あんた戦えるんでしょうね!?」

「戦う?」

「そうよ! ちゃんとあたしを守ってよね!?」

「なぜオレが、砂漠の神と戦うんだ?」

「……へ?」

 砂漠の神?
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