銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「王よ、さぞやご心配でござりましょうや」

「黙れ! お前が全ての元凶である事は分かっているのだ!」

 ヴァニスは番人に向かって吠えた。

 ほんと、白々しい! なにが『さぞやご心配』よ!

 マティルダちゃんの人格をあんなに踏みにじっておいて!

 そして、そして挙句の果てに、マティルダちゃんは……!

 恥を知りなさいよ! あんたのそのシワシワの面の皮は、どれだけ分厚いってのよ!?

 引っ張って伸ばしたらテニスコートぐらいあるんじゃないの!?

「なあ、長よ」

「風の精霊か。わたしは長ではない」

「どうでもいい。オレは今まであんたの事を、腑抜けた年寄りだとばかり思っていた」

「ふむ」

「ずいぶん、老骨に鞭打ってくれたもんだな」

 ジン、ノーム、ヴァニス、番人。

 利用した者、された者が、言葉も無くそれぞれ見つめ合う場に、緊迫した空気が流れた。

「この際だ。あらいざらい暴露してもらおうか」

「もはや大詰めだ! この期に及んで隠し立ては無用だ!」

「長、いいえ番人。どうかほんとうの事をおしえてください」

 ジンは冷たく、ヴァニスは怒りに震え、ノームは切実に訴える。

 番人だけは、何の感情も無かった。

「何を知りたいと?」

「始祖の神の正体よ。始祖の神とはいったいどんな神なの?」

 そう問うあたしをしばし見つめて、番人はゆっくりと両目を瞑った。

 そして何かを崇めるように、両手を広げて天を仰ぐ。
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