銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしはゴクリとツバを飲み込んだ。

 知らず知らず鼓動が早くなる。

 まさか。ちょっと待って、まさか……。

「破壊。次なる創造の為に、この世界の全てを破壊する事こそが、始祖の神の果たすべき務めである」

「世界の……破壊!?」

 この世界の全てを破壊するっていうの!?

「なに言ってんのあんた! これがもし冗談だったら笑えないどころか、袋叩きもんよ!?」

 でも番人は天を見上げたまま、完全に陶酔している様子で、冗談を言っているようには見えない。

 ……ほ、本当に?

 本当の本当に?

 じゃあ本当に、始祖の神は……

「この世界の全てを破壊する神だって言うの!?」

「破壊の神ではない。あのお方は創造の神である」

「同じことよ!!」

 世界全ての破壊ですって!? そんな大仰な話、信じられないわ!

 あまりに非現実的よ! そんな事不可能でしょう!?

「ね、ねぇ! そんなの嘘よね!? 不可能よね!?」

 呆然としているヴァニスの横で、ジンとノームが凍り付いている。

 その表情を見てあたしは即座に理解した。

 本当なんだわ。神の眷属である精霊達には、本能で分かるんだ。

 始祖の神が、本当に世界を破壊する力を持っているのだという事を。
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