銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 熱気に煽られながらも、ジンが懸命に治癒を続けている。

 ジンが集中できない! このままじゃあたし達まで危ないし、なんとかしたいのはやまやまだけど、いったいどうすればいいの!?

 あたしはゲホゲホ咳き込みながら、必死に辺りを見渡した。

 水、どこかに水は!? 少しでも水があれば、なんとかなるかもしれない!

 でも目に入るのは、炎とガレキと苦しむ人間達ばかりで、水なんてどこにもない!

 どうしよう! 水!水!水!

 誰がどっかで水汲んできて!!

 水―――――!! み……

「そうだわ!」

 あたしはドレスの内側を探った。

 確か、ここに……あった!

 まさぐる指先に固い感触。急いで手を開いて、それを確認する。

 ティアドロップ型の、美しく透き通るクリスタル。

 ……モネグロスの涙!!

 それを両手で握り締め、額に押し当てるようにして、あたしは必死に祈った。

 神の涙。

 心優しく、純粋で慈悲深い、モネグロスの涙。

 どうか助けて。あたし達を、ここにいる者達を。

 そして、世界を救う為に力を貸してください!!

―― ふわり……

 全身が、何か柔らかい物に包まれる感覚がした。

 あ……覚えてる。この感覚。モネグロスに守られ抱きしめられた時の感覚と同じだわ。

 あぁ、とてもとても、柔らかな……。
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