銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あの、どっからどう見ても、ハシゴ酒してるおっちゃんにしか見えないのが!?

 か、神様なのお!?
 嘘でしょおぉぉ―――!?

―― ドサリ。

 あ……

 転んだ。

「ちょっと! 神様転んじゃったわよ!? 大丈夫なの!?」

 あたしと風の精霊は、慌てて神様の下へ駆け寄った。

 砂漠の神様はヒィヒィ息をしながら、必死にジタバタ起き上がろうとしている。

「モネグロス! 大丈夫か!?」

「あぁ、風の精霊ですか? 久しいですね……」

 肩でゼイゼイ息をしながら振り向いた砂漠の神の顔は、確かに、美しかった。

 薄い金の髪、金の瞳の男神。

 砂漠の砂が日に照らされた様な、微細に輝く金の色。

 そして彫刻の胸像のように、美しく整った目鼻立ち。

 首筋から足元に至るまで、すっぽりと覆い尽くすような幅広な白い衣装の生地も、まるで砂金が練り込まれているように輝いている。

 見た目だけで言うなら、確かに神様っぽいわ。素晴らしく美形だし。
 でも……。

 具合、悪そう。それもすっごく。

 顔色良くないのを通り越して、半分土気色してるわ。

 目の下にクマまで出来てるし、妙に生々しい神様ね、この人。いや、この神様。

 こんなに若くて美形な神様なのに……

 ゴホゴホ咳き込んでる姿を見ると、時代劇の長屋で薬湯飲んでる、病気のおとっつぁんにしか見えない……。
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