銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「なんですってえぇ!?」

「かなり弱っていたから、動かしたくなくて休ませていたんだ!」

「なんでまた、よりによってそんな所に置いてきたのよ!?」

「あの時はこんな状況になってるなんて知らなかったんだよ!」

「それって絶対にマズイわ!モネグロスが危ない! すぐに行きましょう! 降臨の場へ!」

 皆が揃って力強く頷いた。

 ロッテンマイヤーさんが胸を張る。

「ヴァニス王様、後のことはわたくしにお任せ下さいませ」

「うむ。城内の者達の救助を頼むぞ」

 そう言った後、ヴァニスは視線を落として沈んだ声を出す。

「生存者の救出が済んだら……マティルダを見つけてやって欲しい」

「……」

「頼む」

「……承知、いたしました」

 兵士達が、捕らえられたちょびンを連れて急いで救助活動に向かう。

 深々と頭を下げるロッテンマイヤーさんに背を向けて、あたし達は走り出した。

 急げ急げ急げ! 待っててモネグロス――!

 城の内部に詳しいヴァニスを先頭にして、ひた走る。

 でも半壊状態の城はガレキだらけで、通りにくい事この上ない!

 あたしはロングドレスの裾を大胆にたくし上げ、大股開きでガレキをよじ登った。

 この際、恥も外聞も後回しよ! パンツもふんどしも気になんてしてる場合じゃないわ!

 あちこちで怪我をして、倒れている人々の姿が目に入る。

 ヴァニスが苦悩の表情でそれを振り切り、出口に向かって進んだ。

 みんなごめんなさい! いま救助が来るから待ってて! どうかそれまで頑張って!

 そう祈りながら、後ろ髪引かれる思いで突っ走った。
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