銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 そのままジーッとあたしを見つめる神様は、『そんなバカな』の表情のまま、ひと言も言葉を発しない。

 え……えっと……。

 よく分からないけど、あたし、神様の希望を打ち砕いちゃったの?

 たまらなく居心地悪い視線と空間なんだけど……。

「は、初めまして。相原 雫です」

 重い沈黙に耐え切れず、仕方ないからとりあえず挨拶しながら頭を下げた。

 それでも神様は相変わらず黙ったままで、やがてその表情から、完全に希望の灯りが消え去っていく。

「そんな……アグア……アグア……」

 呆けたように呟く神様の両目に、こんもりと涙が盛り上がる。

 え?っと思う間もなく、なんと神様は、その場で盛大に泣き始めた。

「あぁ! アグア! 私の愛しい君よー!」

 ……ちょっとぉ!?
 転んだと思ったら次は泣き出したわよ!? この神様!

 あたしは完全に脱力しながら、大泣きする神様をポカンと眺めていた。

 誰が言ったんだっけ?
 神様に会ったら、あたしの今後の身の振り方を相談しようって。

 ……悪いけど遠慮させてもらうわ。

 お先真っ暗で、八方手詰まりの状況だけど、この神様にだけは相談する気はまったくない。

 なんのご利益も無いばかりか、余計ドツボに嵌りそうだもの。

 祟られる。絶対。

「どーすんのよこれ。力の弱った神様って、みんなこんな感じなの?」

「いや。モネグロスは元々こういう感じの神だ」

「元々?」

 あ、泣きすぎて咽てる。
 あ、また吐きそうになってる。
 元々こんな神様なの?
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