銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
『アグアは私の全てです。この手で取り戻したい』

『アグアよ、待っていて下さい! 私は今そこへ行きます!』

 ひとつひとつの光が、モネグロスの姿になる。

 彼の真摯な愛を訴えて、力尽きるように消えていく。

 あれは、あたしの中のモネグロスの記憶。

 あたしが記憶する、モネグロスの真実の心。

 あたしの記憶と、モネグロスが最期に残した想いが共鳴しているんだわ。

『アグアに会うまで、私は絶対に消滅するわけにはいきません』

『私にとって何より大切なのはアグアです』

 アグアさんは目に見えて狼狽している。

 憔悴し切ったモネグロスが、自分への変わらぬ愛を誓う姿に。

 その、ひとつひとつの言葉の強さと、深さに。

 真っ直ぐに向けられる確かな愛に、彼女は動揺する。

 もしこれが真実なら、そうなのだとしたら。

 なら、自分は……。

『アグア! 私のアグア!』

 振り絞るような絶叫に、彼女はビクンと震えた。

 そして光の中のモネグロスと目を合わせる。

 紛れも無い真実の愛に染められたその目に、彼女は動けない。

 モネグロスの切ない叫びと想いを告げて、光はまたひとつ消えていく。

『愛しい君……私は、ここに……』

 消滅しかけたモネグロスが、泣きながら城を見上げている。

 愛する者を求める姿。懸命に伸ばされる指先。

 そして……光は消えていく。

『アグア……永遠の魂の片割れ……』

 焦がれる想い。偽りの無い愛。

 ひとつ、またひとつ、告げては儚く消えていく。

『会いたかった。アグア……』

 そして……

 それが、最後だった。

 喜びの涙に溢れ、最期の愛を捧げたモネグロスの光が……

 消えた。
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