銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「ガアアァァァッ!!」

 あたしの叫びに答えるように、イフリートが天に向かって咆哮する。

 空全体から、雨あられのごとく灼熱の炎が降り注いだ。

 炎は地を焼き、風に煽られ、あちこちが同時に燃え盛る。

 立ち昇る炎が風に揺れ踊る様を、あたしは熱さに顔を顰めながら見ていた。

 広範囲で同時に燃え上がった炎が、ヂラヂラと意思を持つように揺らめいている。

 それぞれの炎が渦を巻き始め、あれよと言う間に、それは空に達するほどの太い炎の竜巻となった。

 命を宿したように暴れ狂っているあれは……火災旋風!?

 以前にテレビのニュースで見た事がある。

 広範囲の火災現場において、最も恐るべき自然現象。

 ひとたびこの現象が起こってしまったら、その被害はまさに人智の及ぶところではない。地上の全てを高温の炎で焼き尽くす。

 ユラユラと身をくねらし天に昇るその姿は、巨大な炎の龍そのものだ。

 ジンとイフリートによって作り出された何匹もの炎の龍が、悠々と天と地を繋いでいる。

 なんて恐ろしく、そして美しい光景! まさに圧巻!

 しかも……

 熱いっ!!

 メチャクチャに熱い! 半端なく熱い!!

 ノームもヴァニスも、熱さに耐えかねて悶え苦しんでいる。

 我慢できない! 息を吸えない! 鼻が、ノドが、焼けるぅ!!
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