銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「雫!!」

 パニック状態のあたしの耳に、あたしの名を呼ぶ声が届いた。

 炎の竜を従えるように立つジンが、番人を睨みつけながらあたしに怒鳴っている。

「なにやってんだお前は!!」

 ……。

 ……はい?

『なにやってる』……ですと?

 ……。

 おい、ちょっと!

 なにやってるって、それはどっちかっていうとあたしのセリフでしょう!?

 なんであたしが文句つけられなきゃならないの!?

 あんたこそ何やってんのよ!?

 確かに物凄い攻撃力だけど、当たり判定デカ過ぎなのよ!

 どうすんのよ! 敵も味方も総攻撃じゃないの!

 もはや攻撃じゃなくて、これって自滅よ自滅!

 これじゃあたし達まで死んじゃうわ!

 そうなる前に、早くなんとかしなさいよ―――!

 ……って罵倒を、あたしは心の中で連発した。

 ジンに向かって叫びたいところだけれど、とてもじゃないけどそれどころじゃない!

 歯を食いしばって熱さに耐えるだけで精一杯だ。

 それももう、限界! お願いジン! 早くなんとかして! 早く!

「早く何とかしろ! 雫!」

 ……え?

 あたしは朦朧とした意識で顔を上げた。

「ここはお前の出番だろうが!」

 あたし、の、出番?

「守れ! お前の力で! これはお前にしかできないんだ!」
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