銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしにしか、できない?

「自分ができる事をするんだろ!? お前が言った言葉だぞ!?」

 あたしが、できる事。それは、水の力で、みんなを守る事……。

「ノーム!」

イフリートの呼びかける声に、意識混濁状態だったノームがハッとする。

「ノームよ! 頼む!」

「イフリート……」

 ふたりは一瞬見つめ合い、頷き合った。

 ノームの手から勢い良く蔓が延び、それはジン達の頭上を超え、番人の横をすり抜けアグアさんの元まで届く。

 そしてアグアさんの体に素早く絡みつき、彼女を引っ張り上げた。

 宙を飛ぶように、アグアさんの体がこっちに引き寄せられる。

 そうはさせじとばかりに、番人の杖から細い枝が伸びてアグアさんを追った。

 彼女の足首を枝先が捕らえようとした瞬間、ノームの蔓が枝に巻きつく。

 枝と蔓が互いに絡んで、ノームの蔓が引き千切られた。

「うぐぅ……!」

 苦痛の声を漏らすノーム。

 でもその間にアグアさんは、無事にあたし達のいる所まで運ばれてドサリと地面に落ちた。

「はぁ……はぁ……!」

 荒い呼吸で体を丸め、ノームは今にも倒れそうだ。

 それでも懸命に笑顔を作り、イフリートを見つめている。

 イフリートは力強く頷き返した。

「さあ雫! 次はお前の番だろう!?」

「ジン……」

 でもあたし、どうやればいいのか、わかんないのよ。
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