銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 出会った時、あなたはひとりだった。

 誰一人として仲間のいない孤立無援の状態で、砂漠に降り立ちあたしと出会った。

 常に、自分の信じるものの為に挑んでいた。

 そんなあなたを、あたしは、愛している。

 あたしの水が、力が湧きあがる。

 たおやかに、力強く、枯れることなく湧く泉のように。

 絶え間なく寄せる波のように、満ちていく潮のように、あたしの中で水は湧き、萌え、渦巻き、そしてどこまでも澄み渡る。

 この流れは、それは、大切な命を守るために……。

『お前もオレを信じろ』?

 ……バッカじゃないの? あたしはねぇ……

「とっくの昔から信じてるわよ! あんたの事を誰よりも!」

 突然、あたしの目の前に小さな水の粒が生まれた。

 透明に輝く水の、ほんのわずかな一粒が、大きく弾け飛ぶ。

 弾けた飛沫が噴水のように拡散し、まるで皮膜のようにあたし達のいる一帯を包み込んだ。

 水のドーム。

 見渡す視界が、雨の滴る窓ガラスのようにうっすらと歪んでいる。

 常に水が巡り、あたし達を炎の熱から守ってくれているんだわ。

 さっきまでの灼熱地獄がウソのよう。体の芯まで熱く火照った全身を、涼やかな空気が完全に癒してくれた。

 歪む視界の向こうで、ジンが自分の手の平を見ている。

 たぶん、ジンの体もこの水の皮膜のようなもので守られているんだ。

 あたしが、ジンを守っている!

 ジンの手がギュッと強く握り締められ、彼はハッキリと微笑んだ。

 その笑顔は、明らかにあたしに向けられていた。
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