銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 えぇ、分かってる! そんな簡単な道理分かってる! 分かってるけど!

 自分を助けるために、目の前で少女が犠牲になってるのよ!?

 全身血まみれになって!

 それをあたしは、なんにもできずに見てるだけ!

 守られるだけ守られながら、ブラブラぶら下がって、見ている事しかできないの!

 ……気が狂いそうよ!!!

「だって……これが……」

 ノームが途切れ途切れに話すたび、その可憐な唇から緑の液体がコポコポと流れた。

「これが、わたしの……使命、誇り……」

「しゃべっちゃだめよ!」

「まもりた、い、です……どうか、まもらせて……わたしにも……」

 イフリートのように。

 わたしが恋した、彼の最期のように。

 彼に想いを寄せた者として、恥ずかしくないだけの……

「誇りをもって……みんなを、まもら、せて……」

 涙が、ドォッとあたしの両目から溢れ出た。

 堪らない感情が心の奥から溢れて溢れて、嵐のように全身を駆け巡る。

 咳き込むように泣きながら、何も出来ない自分を呪った。

 それしかできない自分の無力さを、心底から呪った。

―― ズウゥゥ!

 そして無情に振動が響く。

 まさか、また穴が塞がり始めた!?

「うぐうぅぅ……!」

 歯を食いしばるノームの全身から、緑の液体が噴き出る。

 文字通り、死に物狂いであたし達を守ろうとしているノームの体が緑に染まった。

 もう、もうやめてええぇぇ!!
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