銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 目の前に立ちはだかる番人の衣装の白さが、あたしの頭の中までも真っ白に染めた。

 鼓動は極限に速まり、でも思考はまるで働かず、あたしはゆっくりと目線を上げる。

 見上げるその先には、あたしをじぃっと見下ろす番人の顔が……。

 その顔を見た瞬間、真っ白だった頭と心に、突然感情が爆発した。

 体の芯から強い荒波のようなものが勢いよく押し寄せ、あたしの全てを飲み込み支配する。

 あたしは番人を睨み上げて叫んだ。

「番人!!」

 怒りなのか、正義感なのか、使命感なのか。

 そのどれとも言えない感情が、あたしの口を突いて飛び出す。

「あたしは、あんただけは許さない!!」

 世界に生きる者達の立場。立場によるそれぞれの理屈。

 どれかが絶対的に正しく、どれかが絶対に間違いではない。

 それを知ったうえで、それでも……

「あんただけは認めるわけにはいかない!!」

 番人と目を合わせ、その視線を微動だにせず、あたしは言葉を浴びせた。

 この意思をあんたの目の前に堂々突きつけて、貫き通してやる!!

 必ず!!

―― バンッ!!

 何かの塊りが破裂したような音が響いた。

 ジンが右手を大きく開き、こちらに向かって突き出している。

 その手から、風が……

「うおおおおぉぉ!!」

 そして、血で汚れた口元から雄叫びを発し、ヴァニスが剣を構えながら風に乗って突っ込んできた。
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