銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「余も、お前だけは許さぬ!!」

 黒い弾丸のようにヴァニスは一直線に飛ぶ。

 輝く剣の切っ先が、番人の背中に狙いを定めていた。

 あっと思う時間すら無く、ヴァニスの剣が番人の体を貫いて……

―― キィィン……!

「!?」

 鋭い金属音が聞こえるのと、ヴァニスが地面に転がり落ちるのと同時だった。

 なんで!? てっきり剣が番人の背中を突き刺したと思ったのに、なにが起こったの!?

「ヴァニス大丈夫!?」

「う……」

 脇腹を片手で押さえながら、ヴァニスは苦しそうに身悶えている。

 その手がヌラヌラとした血の色で染まっているのが見えた。

 石の槍に抉られた部分から、あんなに大量出血してる!

「う、動いちゃだめよヴァニス!」

 苦悶するヴァニスを平然と見下ろしている番人の背後から、フワリッと何かが浮かび上がった。

 あれは、杖だ。番人の杖が、ユラユラ宙に頼り無げに動いていたかと思うと……

「ぐうっ!?」

 いきなり杖の先がヴァニスの足に深々と突き刺さって、ヴァニスは両目を見開いて悲鳴をあげた。

 杖は太もものあたりに、『これでもか』と言わんばかりにギリギリとめり込んでいる。

 そして、歯を食いしばって耐えているヴァニスの足から、一気に杖が引き抜かれた。

「……!」

 足から溢れる真っ赤な血。

 脇腹と足を手で押さえ、ヴァニスは声も無く悶絶した。
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