銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「ジン、ヴァニスが今、逝ったよ……」

 あたしは光の柱を目で追いながら、胸を震わせて語りかける。

 最後にアグアさんを、世界を救って逝ったよ。

 ジンが何度も救った彼の命が、世界を守ったんだよ。ついに守りきったんだよ。

 そしてあなたも……逝くのね。

 終焉。

 これで終わる。やっとのことで。

 もう代償を払う必要は無い。払えるだけ払い尽くしてしまったから。

 そして手元に残るのは、世界の存続。

 今までと変わりなく、世界は動き続ける。ただそれだけ。

 だた、それだけの当たり前の事の為に、あたしは世界よりも大きいものを失ってしまうのよ。

 ジン……。

 この果てない虚しさの、この遥かな苦しみの、救いはどこにあるというの……?


「ククク……」


 ……。

 なに? 今、なにか……


「クククク……」


 何の音?


 誰かが、笑っている。

 耐え切れぬ喜びに心底から笑っている。

 これは、そんな声。

「これぞ、大願成就、なり」

「……!!」

 あたしの顔が一気に強張り、ぞおぉっと背中が総毛立つ。

 全身から冷や汗が噴き出して心臓が破裂しそうだ。

 嫌だ。見たく、無い。

 でも、あたしは確認しなければならない。

 ギチギチとぎこちなく首を動かして振り返ったあたしの目は、一番見たくないモノをはっきりと見てしまった。

 番人の、心からの満足げな笑顔を。

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