銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ただ、ひとつだけ疑問に思う。

 なぜあたしは消滅しなかったんだろう。

『あなたは、この世界の存在では無い。わたしが破壊し、創造するのは、この世界のものだけ』

 ……ああ、そうか。

 あたしはこっちの世界の人間じゃないから、弾き出されてしまったんだ。

 そうだったのかと納得した途端、自嘲のような可笑しさが少しだけ込み上げる。

 つまり、どこまでも中途半端な存在なのね。あたしって。

『存在よ、答えなさい』

 ……なによ。なにを答えろって?

 それにしても、ずいぶんあんた態度がでかいわね。当然のような命令口調が癪に障るわ。

『なんのために、この世界へ来ましたか?』

 あたしの胸に鋭く激しい痛みが走って、思わず手で胸を押さえつける。

『答えなさい。なんのために、この世界へ来ましたか?』

 ……。

『答えなさい。存在よ。答えなさい』

 しつこいわね!

 あんた、自分がいま他人様の地雷を思いっきり踏んでる事に気が付かないの!?

 ズカズカと土足で人の心に入り込むんじゃないわよ! この傍若無人さって、まったく番人そっくり!

 本当に番人ってあんたの眷属なのね! 絶妙のコンビよ、あんたら!

 ……なんのために来たか、ですって?

 世界の消滅に利用される為に来たのよ!

 いいように利用されて、さんざん踊らされて、大切な物全部失って、その事実を納得する為だけに、ここにきたのよ!
< 598 / 618 >

この作品をシェア

pagetop