銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 天も泣いてくれているんだ。あたしの為に。
 そう思うと、ほんの少しだけ慰められる気がした。

 無残にアスファルトに叩きつけられて、雨に濡れるあたしの遺体か。
 それも終焉に相応しいのかも知れないわね。ふふ……。

 再び意を決して指とヒールにグッと力を込めた時、あたしは奇妙な事実に気が付いた。

 見れば、下の道路を歩く人たちの誰も、傘を差していない。

 突然の雨に誰ひとり慌てる様子もなく、平然と普通に歩いてる。

 道路も全然濡れていないし、でも確かに今こうして雨が降っているのに?

 疑問に思ったあたしは、よくよく周囲を見渡した。

 ……え?

 不可解な光景に気づいた呆気にとられたあたしは、目を凝らしてもう一度良く見直す。

 ……え? えぇ?

 指とヒールから、思わず力が抜ける。
 両目を大きく開いて、周囲360度全体を見渡して、確信した。

 やっぱり、間違いない。この雨……。
 あたしの周りだけに降ってる……。
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