銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしは目の前に繰り広げられる命の再生に見惚れた。

 なんて美しい。まるで宇宙に散らばる星々のよう。

 それぞれに独特の色を放つ無限の命の輝きと、膨大な命渦巻く銀河の創造。

 この目の前の荘厳さを、どう例えればいい?

 ひたすらに命とは、こんなにまで美しいものなんだ。

 ……ふと、ひとつの光に目が止まったあたしは、引き寄せられるようにその光に近づいた。

 その銀色の光はひと際美しく、強く、誇り高く輝いている。

 他のどの命の光よりも、あたしの心を捕らえて放さないその光は……。

 両手でそっとその光を包み込むと、手の平が美しい銀の光に彩られる。

 この温もり。この輝き。それは間違いようもない。

 あたしの唇が、その命の名を呼んだ。

「ジン……」

 再び熱い涙が零れる。

「ジン、ジン、ジン」

 泣きながら、何度も繰り返す。

 ジンの命を確かにこの手に感じる。

 万感の思いが込み上げて、膨れ上がる至上の幸福感。

 あなたは、ここに、いる。

 それがあたしの全て。

 全てよ。ジン……。


 不意に、体の端々から分解されていくような不快感を感じた。

 これは、会社の屋上で感じた感覚と同じ。こちらの世界にトリップして来た時の感覚だわ。

 あぁ……時が、きた。

< 603 / 618 >

この作品をシェア

pagetop