銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしの役目は終わった。

 だからあたしは帰るんだ。自分が居るべき本来の世界へ。

 逃げ出し、放り投げようとした世界へ、あたしはもう一度戻っていく。

 今度こそ、本当に自分の人生を生きる為に。

 逃げた先になど、どこにも居場所は無い。あたしが生きるべきはあの世界なんだ。

 間違ってはいけない。居るべき場所を間違えてはいけない。


 意識が掠れていき、命の銀河も涙で掠れる。

 ふと、あの夜見上げた流星夜を思い出した。

 誓ったわ。あの時。

 ここへ来られて良かったと、きっと心から思える時を迎えてみせると。

 道行く先の希望を信じようと。

 この旅を自分自身の望んだ旅にしようと。


 意識が途切れる。

 目の前がどんどん暗くなってきて、ジンの命の光も見えなくなる。


 あたし達は、やはり結ばれる事はなかった。

 これはきっと、悲恋というべき恋なのだろう。

 それでもあたしは断言できるわ、ジン。あたしはね……


「ここへ来られて本当に良かった。あなたに会えたから」


 それが、この世界でのあたしの全てであり

 あたしの最後の言葉になった。


 そこであたしの全ての感覚は止まり……

 意識が完全に消え去った……。



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