銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「どうやって城に入り込むんだ? どうやってアグアの居場所を探す?」

「そこら辺の現実的な問題は、全部あんたに一任するわ」

「……おい」

「だってあたし、こっちの世界の事情なんてまるで知らないもの。作戦なんて立てられるわけないでしょ? ちょっと考えれば分かりそうなもんじゃないの。やっぱりダメねぇ、男って」

「……」

 風の精霊はあたしにクルリと背中を向けて、

「これだからまったく人間ってのは……。いや、これはこいつ固有の特性か?」

 とか何とか、ぶつぶつ言ってる。

「ちょっと風の精霊……って、いちいち呼ぶのも面倒くさいわね。あたしが名前を付けてあげる。『ジン』って名はどう?」

「はあ? 名前だと?」

「子どもの頃に読んだファンタジー小説の登場人物に、ジンって名前の風の精霊がいたの。すごく強くて、とても仲間思いの、カッコイイ精霊だったのよ。ね? あんたにピッタリの名前でしょ?」

「……」

「どう? 気に入らないかしら?」

「……別に。好きに呼べばいい」

「じゃあ、あんたは今から『ジン』よ。よろしくね、ジン」


 ジンは機嫌悪そうに、プイッと顔を横に背けた。

 うーん。やっぱり気に入らなかったかしら。それとも、名前で呼ばれるのが慣れなくて嫌なのかも。

 でもこれからずっと、いちいち『風の精霊』って呼び続けるのも、なんかねぇ。
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