銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「命令すれば大丈夫なんじゃなかったの!?」

「どうやら向こうも、私の存在をすっかり忘れているようです」

「……」

「その、なにぶん、知能が低いので……」

「この似た者コンビはあ! ど――してくれるのよ!? このままじゃあたし、排除されちゃうじゃないの!」

「モネグロス、雫、見ろ!」

 ジンが前方を指差しながら大声で叫んだ。

「森の人間の国への入り口だ!」

 人間の国への入り口!?
 ど、どこ!? どこにあるの!?

 ジンが指さした方向を急いで見回してみたけれど、それらしい物は何も見えない。

 どこもかしこも、広大な砂漠が遥かに広がるばかりで……。

 ん?

 目を凝らしたずっと向こうに、何か異物が見える。

 あれは、透明な……小さな球体?

 透き通った球体の中に、歪んだ何かが見えている。

「あれが人間の国です!」

「え!?」

「あの球体から、人間の国へ行けるのです!」

 皆の注目が球体に集まって、つい、番人から意識が逸れてしまった。

 ハッと気がつくと、もう番人の巨大な腕が頭上まで迫っている。

―― バギィッ!!

 派手な音を立てて、マストが一本、真っぷたつにへし折られてしまった。

 折れた極太の巨大マストが、真っ直ぐ倒れ落ちてくる。

 ……あたしとモネグロスのいる場所に!

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