銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「あんたを置き去りになんてできないわ!」

「心配するな! オレも一緒に行く!」

 叫んだジンの体が忽然と消え、次の瞬間、鼓膜が痛むほどの鋭い音をたてて疾風が吹く。

 その風に番人の手足が千々に切り刻まれ、四方に砕け飛んだ。

 巨大な体がグラリと揺れ、大きな振動と共に引っくり返った。

「ジン、やったわ! すごい風の威力!」

 ……と喜んだのもつかの間、なんと、倒れた番人の両手足がみるみる再生していく。

「番人の体は砂で出来ています! 切り刻んでも、すぐ元通りになるのです!」

「そ、そんな便利な……!」

「ええ! 私、再生能力だけは自信を持って創り込みましたから!」

「この状況でなに自慢してんのよ!」

 まったく、いらないとこだけ手の込んだ細工して!!

 マッドサイエンティストかお前は!!

『雫! 再生し切らないうちに船を動かせ!』

 ジンの声が空中に響いた。

 そ、そうだ! 船、船!!

 あたしは、手の平で思い切りバンバン床を叩き付けた。

「船さん! 聞こえる!? お願い走って! あの球体に……森の人間の国に向かって全速力で走って!」

 いくら呼びかけても、船はウンともスンとも反応が無い。

 まさか、目ぇ回して気絶しちゃってる!?

 モネグロスの創る物って、なんでこんな不必要に生々しいのよ!?

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