銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「急いで! 船さん負けないで! 神の船の名にかけて、はにわなんかに負けちゃだめ――!」

 狂気のように疾走する神の船。

 すさまじい風の勢いに、体が船の外に吹っ飛ばされてしまいそうになる。

 あたしは左腕でモネグロスの体を床に押さえ込み、右腕割れて突き出た板にしがみ付いた。

 番人はどんどん距離を縮めて迫ってくる。

 追いつかれる! もっと速く! 速く速く速く―――!!

 その時、透明な球体が大きく歪んで広がり始めた。

 形の定まらない巨大スクリーンのように、識別不能な歪んだ色彩が大きく広がり、こちらに向かって伸びてくる。

 もう少し! あともうちょっと……!!

 突然、頭上が薄暗い影に覆われた。

 振り向くと、番人の巨大な手の平が頭上を完全に覆っている。

 ああ! ついに追いつかれた!!

 唸るような風の音が走り、頭上の番人の手が粉々に砕け散った。

 飛び散る砂の塊に押されるように、実体化したジンの体が吹き飛ばされて、こっちに飛んできた。

「ジン―――――!!」

 ジンの銀の両目があたしを捉え、彼の両手があたしに向かって差し出される。

 彼があたしの体を守るように強く抱きかかえたと同時に、神の船は、人間の国の入り口に思い切り突っ込んでいった。



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