銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「あ、あたしここで留守番してるわ! いってらっしゃい頑張って!」

 その場にペタンと正座して、あたしは右手を振った。

 モネグロスが慌ててあたしの前に座り込み、その手を握る。

「し、雫! いいえ私は、決してそんなつもりでは!」

「ううん、いいの。これが最善の方法だわ」

 あたしを置いて行くのが一番の得策よ。

 大事なプロジェクトを前に、不安要素を抱えたままじゃ失敗する確率が跳ね上がる。

 だからどうか、そんなに気を使わないで。

「不安要素だなどと! 雫は我らの大切な仲間ですよ!」

 モネグロスが、真摯な表情であたしの手を強く握ってくれて、あたしもその手を強く握り返した。

 そりゃあ、元の世界に戻れるかどうかが懸かってる問題だもの。

 あたし自身も行けるものなら、一緒に行きたい。言い出した責任も、モネグロスをけし掛けた責任もあるし。

「でも、あたしがいたら足手まといだわ」

「共に行きましょう雫! 雫も安全に潜入可能な方法を探しますから!」

 モネグロスがジンを振り返った。

「きっとジンが良い手立てを考え出してくれますよ!」

「またオレかよ……」

 やれやれとジンが軽く頭を振った。

「だが雫、実際お前には着いて来て欲しい」

「え? あたしに? どうして?」

「それは……」
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