銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「人間の王が、お前と会う事を望んでいるゆえだ」

「……!?」

 突然、第三者の声が聞こえて、慌てて振り返った先にふたつの影があった。

 人間とは明らかに異質な、でもとても自然な存在感を持つあの影は、精霊? きっと精霊だ。

 片方の精霊は、燃え上がるような真紅の髪と、同色の瞳。そして雄々しく、猛々しい顔つきの長身な男。

 もう片方の精霊は、濃い緑色に少し茶が混じった長い巻き髪で、とても小柄で幼い顔立ちの、まるで少女のような精霊だ。

「火の精霊と、土の精霊か」

「風の精霊よ、王と長の命により、お前を迎えに来た。おとなしく我等と共に来るべし」

 ジンは、何も答えずに黙ったままだ。

 両者の間に流れる緊迫感で、これが友好ムードじゃない事がハッキリ分かる。

 精霊達の中で、ジンに協力してくれる者はもう誰もいないはず。

 じゃあやっぱりこのふたりも敵側?

「どういう事だ?」

 ジンが、火の精霊に向かって静かに問いかける。

「狂王がこいつに、雫に会いたがっているとはどういう事だ?」

 え? 狂王があたしに会いたがってる?

 あ、そういえばさっき、何かそんなこと言ってたわね!

 や、やだ! なんで狂王みたいな変質者があたしに会いたがるのよ!?
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