銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「王は、その人間に興味が有り。理由は不明」

「なぜ狂王が、雫の事を知っているんだ?」

 そ、そうよ! まだ会った事も無いんだから、知ってるはずないのに!

 その得体の知れない不気味さが、さらに変質者パワー全開だわ!

「大地は、どの世界とも繋がっているゆえ」

「土の精霊の能力か?」

「土を通して、お前達の動向は全て承知」

 少女のような土の精霊が、オドオドと顔を逸らして視線を避ける。

 火の精霊が、なんの感情も窺えない赤い瞳であたしを見た。

「風の精霊よ、我らと共に城へ行くべし。その人間の女を連れて」

「ぜ、絶対嫌よ! 城へ行くなんて!」

 あたしは思わずそう叫んだ。

 ……あ、いや、城に行く事自体は別にいいのよ。これから行こうとしてたところだったし。

 ただ、狂王の所に行くのが嫌なのよ! しかもあんた達と一緒なんて、絶対に嫌!

 わざわざ変態の顔を見に行くほど、あたしは暇でも物好きでもないわ!

「雫は渡しません! 絶対に渡しませんよ! 私はもう二度と、大切なものを手放しはしない!」

 モネグロスが、あたしを庇うようにギュッと抱きしめる。

「どうしてもと言うなら、私も連れて行きなさい! 私は王に話があるのです! さあ、城まで案内しなさい!」
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