【短】ねぇ、虎助


 至近距離で見た虎助の顔は、とても美しかった。

 月を背に、物憂げに瞳を揺らしている。

 どこか、寂しそうに。


「虎助?」


 口付けを拒みはしなかった。

 静かに目を伏せる。

 長い睫毛が揺れた。


「私は、」


 口を開く。


「私は貴女が憎くて仕方ない」
「え、」


 穏やかに、告げられる。

 触れ合う程の身体が、そっと離された。


「貴女のせいで、二度も判断を見誤りました」


 囁くような声。


「一度目は、怪我をしたあの夜。二度目は、先日の奇襲」

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