【短】ねぇ、虎助
優しさと、厳しさ。
誇りと、屈辱。
憎しみと、――、
すべてが入り雑じった瞳の中に、私を映した。
「そもそも間違いでした。貴女の前に現れたことは」
「どうして?」
「あの日、私は死ぬと思っていました」
「そんな」
「死ぬ前に、貴女に会いたいと」
「……、」
姿を見せてしまった。
想いが流れ込み、胸が一瞬、キュ、と苦しくなった。
「後悔しました。もう二度と、貴女には近付かないと決めた。それなのに」
助けるためとはいえ、再び現れた。
しかも、振りほどけなかった。