【短】ねぇ、虎助
空気を求め意識も薄れてきた頃、虎助がようやく顔を上げた。
「……やっぱり、お喋りな人ですね」
艶っぽく濡れた唇が動く。
荒くなった呼吸が、互いに溢れた。
「月夜の囁きが、どれ程私を苦しめていたか……」
静かに、しかし叱咤するように。
「だから憎いのです……っ、」
眉を寄せ、切なく、絞り出す。
「もう、私は……、」
頭を抱える虎助を、私は優しく包み込んだ。
「私も、貴方が憎いです」
憎い。
貴方がそう言うのなら。
「とても」