【短】ねぇ、虎助
夜明け
目を開けると、部屋は光に満ちていた。
楽しそうに鳥たちが歌っている。
――夢……?
静かに上体を起こす。
右手をお腹に、左手を胸に、添えてみる。
「虎助……?」
夜は、明けてしまった。
月は、太陽の光に隠れてしまった。
頬を、涙が伝った。
「おはようございます」
女中が朝の支度に襖を開ける。
「あら、」
女中は入り口で声を上げた。
「こんな所に椿の花が……」
「え、」
私は立ち上がり、襖の方へと駆け寄った。