光源氏の腕の中【仮】
反対側から歩いてきた光源氏。

私に気付くなり、深々と頭を下げた。

・・・

きっとコイツも、

私の顔など、見たくもないはず。

愛する女性を横取りされ、

離れ離れになってしまった。

それでもこの男は、

私と会っても、顔色一つ変えない。

いつも物静かで、気品があって、

誰が見ても、見惚れてしまう容姿。

私が朱音を奪っても、

心は繋がっていると分かっているのか?

なぜ、普通でいられる?

・・・

「光源氏」

私は、通り過ぎた瞬間、

光源氏を呼び止めた。


「何でございますか、帝様」


「朱音は恋しくないか?」


「・・・?!」

流石にその言葉には、

顔色を少し変えた。
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