光源氏の腕の中【仮】
「・・・帝様?」

「・・・は。

なんだか急ぎのご様子。

起きておられるなら、

今すぐ来ていただきたいのですが」


「・・・わかった。

すぐに行く」

・・・

そう言った光の腕は、

私を抱きしめる腕に、

力が入っているのが分かった。

・・・

こんな朝早くに使者とは・・・

一体何を考えているのか。

・・・

「私も行く」

「・・・いや。

朱音は、お菊とここにいろ。

帝の傍になど、お前を行かせたくはない」


「・・・うん」

私の存在を確かめるように、

もう一度抱きしめた光。

ほんの少し溜息をつき、

部屋を出ていった。

・・・

私の不安は増すばかりで、

いなくなった光を見つめるように、

ふすまを見つめていた。
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